『ドラゴンクエスト 勇者アベル伝説』は、1990年9月に第32話で打ち切りになったアニメです。視聴率が当時のゴールデンタイムの基準に届かなかったことが主な原因とされています。この記事では、アベル伝説が打ち切りになった理由と、その後第2部で完結に至った経緯、さらにドラクエの作者・鳥山明の死去についても詳しく解説します。
| 作品名 | ドラゴンクエスト 勇者アベル伝説 |
|---|---|
| 原作・キャラクター原案 | 堀井雄二(ストーリー原案)/ 鳥山明(キャラクター原案) |
| 放送局 | フジテレビ系列 |
| 放送期間 | 第1部:1989年12月2日〜1990年9月22日 / 第2部:1991年1月11日〜4月5日 |
| 話数 | 全43話(第1部32話+第2部11話) |
| 打ち切り判定 | 🔴 打ち切り確定(第1部は視聴率低迷により打ち切り。第2部で完結) |
ドラゴンクエスト アベル伝説が打ち切りになった理由
『ドラゴンクエスト 勇者アベル伝説』は、人気ゲーム「ドラゴンクエスト」シリーズを原作としたテレビアニメです。制作は日本アドシステムズ(NAS)とスタジオコメットが担当し、監督にはりんたろう氏が起用されました。当初は1年以上の長期放送が予定されていたとされますが、第32話をもって打ち切りとなっています。
理由1:視聴率がゴールデンタイムの基準に届かなかった
打ち切りの最大の要因は、視聴率の低迷です。アベル伝説はフジテレビ系列で毎週土曜日19時30分、いわゆるゴールデンタイムに放送されていました。しかし、視聴率は10%前後にとどまり、当時のゴールデンタイムのアニメとしては物足りない数字でした。
1989年〜1990年当時、ゴールデンタイムのアニメには15%以上の視聴率が求められる時代でした。同時期に放送されていた『ドラゴンボールZ』(フジテレビ系・水曜19時)は20%超の視聴率を記録しており、同じ鳥山明デザインのアニメでありながら倍近い差がついていたことになります。
フジテレビとしては、社会現象にもなった「ドラクエ」のアニメ化ということで高い視聴率を見込んでいたはずです。ドラクエIIIの発売日(1988年)には行列が社会問題になるほどの人気ゲームであり、アニメにも同等の注目が集まると期待されていました。
しかし結果は最高視聴率12%程度にとどまり、放送期間を通じて大きく数字を伸ばすことができませんでした。ゴールデンタイムの制作費に見合わないと判断され、第32話での打ち切りにつながったとみられています。
なお、10%という数字は現在の基準では決して低くはありませんが、1990年当時のテレビ業界では「ゴールデンで10%は低い」という評価が一般的でした。時代背景も打ち切り判断に影響した一因です。
理由2:裏番組との競合が激しかった
視聴率が伸び悩んだ背景には、同時間帯の裏番組の強さがありました。アベル伝説が放送されていた土曜19時30分の枠では、TBS系の『クイズダービー』などの長寿人気番組が裏番組として放送されていました。『クイズダービー』は1976年から続く高視聴率番組であり、ファミリー層の視聴者を強固に掴んでいました。
さらに、テレビ朝日系では『おぼっちゃまくん』が同時間帯に放送されており、子ども向けの視聴者層が分散する状況にありました。ドラクエのメインターゲットである小中学生の視聴者が、同じアニメである『おぼっちゃまくん』に流れていた可能性は否定できません。
土曜19時台は各局が主力番組を投入する激戦区であり、新番組が安定した視聴率を確保するのは容易ではありませんでした。特にアベル伝説は1989年12月に放送を開始しており、年末年始の特番シーズンと重なったことで、放送開始直後に視聴習慣を定着させる機会を逃した面もあったかもしれません。
1989年〜1990年はバラエティ番組の全盛期でもあり、ゴールデンタイムのアニメ枠そのものが苦戦を強いられる時代に入りつつありました。アベル伝説も、こうしたテレビ業界全体の潮流の中で厳しい競争にさらされていたといえるでしょう。
理由3:ゲームとアニメで求められるものの違い
「ドラゴンクエスト」はゲームとして圧倒的な人気を誇っていましたが、ゲームの面白さがそのままアニメの面白さに直結するとは限りません。アベル伝説はゲームの世界観やモンスターのデザインを使いつつも、勇者アベルと聖女ティアラを中心とした完全オリジナルストーリーで展開されました。そのため、ゲームのストーリーをそのまま映像化することを期待していたファンとの間にギャップが生じた面があります。
ドラクエの魅力は、プレイヤー自身が勇者となって冒険するという「自分ごと」の体験にあります。一方、アニメではアベルという固定の主人公の冒険を「見る」形式になるため、ゲームで感じた没入感は再現しにくい構造でした。主人公の名前すら自分で決められるゲームと、キャラクターが固定されたアニメでは、作品への感情移入の仕方が根本的に異なります。
また、当時はドラクエIVの発売(1990年2月)とアニメの放送期間が重なっていました。ドラクエIVはファミコン最後のドラクエとして大きな話題を集めており、ファンの関心はゲームの新作に集中していたと考えられます。アニメよりもゲームそのものに注目が集まりやすい環境だったことも、視聴率に影響した可能性があるでしょう。
物語の構成自体は「伝説の竜の復活」という壮大なテーマを軸に丁寧に作られており、主人公アベルの声を担当した古谷徹氏をはじめ声優陣も豪華でした。しかし、ドラクエブランドへの期待値が極めて高かっただけに、アニメとしての実際の反響は制作側の想定を下回ったとみられています。
アベル伝説の打ち切りに対するファンの反応
アベル伝説の打ち切りは、当時のファンに大きな衝撃を与えました。特に打ち切り時の最終回の内容は、放送から30年以上経った現在でも語り継がれるほどの衝撃的なものでした。
衝撃的だった打ち切り最終回の内容
第32話の打ち切り最終回は、アニメ史に残るほど衝撃的な終わり方でした。物語がいよいよ佳境に入り、聖剣を手に入れるための「青き珠の神殿」を目指し、不死鳥ラーミアの復活とバラモスとの最終決戦が迫る展開の中、突然場面が切り替わり、年老いた老婆が子供たちに冒険の物語を読み聞かせるシーンになったのです。
この老婆はヒロインのティアラが年老いた姿とされ、子供たちに「アベルや仲間たちは、バラモスとの戦いで誰一人として生きて帰れなかった」と語りました。それまでの冒険を楽しんでいた視聴者にとって、仲間全員が戦死したという結末はあまりにも衝撃的でした。
ヒーローアニメとして勧善懲悪のハッピーエンドを期待していた子どもたちにとっては、トラウマともいえる終わり方だったでしょう。最終回のラスト5分ほどで、それまで積み重ねてきた物語の結末が駆け足で語られる形式は、明らかに制作側が打ち切りに対応するために急遽用意した構成です。
ストーリーが盛り上がってきたタイミングでの突然の打ち切りだったため、当時リアルタイムで見ていた視聴者の中には、この衝撃的な結末だけが記憶に残っている人も少なくありません。ネット上でも「伝説の打ち切り最終回」「トラウマ回」として語り継がれています。
ファンの抗議と第2部での完結
打ち切りの最終回に対しては、ファンから大きな反響と抗議の声が上がりました。「あの終わり方はひどい」「せめて物語を完結させてほしい」という声がテレビ局に多数寄せられたとされています。当時はインターネットが普及していなかったため、手紙やハガキでの抗議が中心でした。
こうしたファンの強い要望に加え、海外への販売・展開のためにも完結した物語が必要だったことが追い風となり、打ち切りから約3カ月後に第2部の制作・放送が決定しました。第2部は1991年1月11日から4月5日まで、フジテレビで毎週金曜16時に全11話が放送されています。
ただし、第2部はゴールデンタイムではなく平日の夕方16時の枠で、しかも関東ローカルでの放送でした。関東以外の地域ではネット局ごとに放送時期が異なり、新聞のテレビ欄では『ドラゴンクエストII』と表記されるケースもありました。そのため、第2部が放送されたこと自体を知らないまま、打ち切り最終回の衝撃だけを記憶しているファンが今も多くいます。
第2部では打ち切り時の「仲間全員死亡」という展開はなかったことにされ、物語は第31話の続きから再開しました。アベルたちはバラモスとの最終決戦に挑み、全員が生存したままハッピーエンドを迎えています。打ち切りからの復活と完結という異例の経緯は、ファンの声が制作サイドを動かした稀有な事例として語られています。
ドラクエの作者・鳥山明の死去について
「ドラクエ 作者 死亡」というキーワードで検索する方も多いため、ここではドラクエシリーズのキャラクターデザインを手がけた鳥山明氏の死去について触れておきます。
鳥山明の死去の経緯
鳥山明氏は2024年3月1日に急性硬膜下血腫のため死去しました。68歳でした。訃報は2024年3月8日に『週刊少年ジャンプ』公式サイト、集英社、バード・スタジオおよびカプセルコーポレーション・トーキョーの連名で公表され、国内外に大きな衝撃を与えました。
鳥山明氏は『ドラゴンボール』の作者として世界的に知られていますが、ドラクエシリーズではキャラクターデザインを初代から一貫して担当していました。スライムやドラキーといったモンスターたちのデザインは鳥山氏の手によるもので、ドラクエの世界観を象徴する存在です。アベル伝説に登場するキャラクターやモンスターも、すべて鳥山明氏のデザインに基づいて制作されています。
スクウェア・エニックスはドラゴンクエスト公式サイトで「スライムをはじめとする魔物でありながらもどこか愛らしいモンスターたちは、『ドラゴンクエスト』の世界に温かみを与えてくださいました」と追悼コメントを発表しました。ゲームデザイナーの堀井雄二氏も「ドラクエの歴史は鳥山さんのキャラデザインとともにあった」と語っています。
なお、鳥山明氏の死去を受けて「ドラクエの今後はどうなるのか」という声も上がりましたが、スクウェア・エニックスは鳥山氏が生前に手がけたデザインをもとにシリーズを継続する方針を示しています。
堀井雄二の現在の活動
一方、ドラクエシリーズの生みの親である堀井雄二氏は存命で、現在も精力的に活動しています。2025年11月には旭日小綬章を受章し、「ドラクエは自分のライフワーク。作ることが人生そのもの」と語っています。
堀井氏は2026年現在も複数のプロジェクトに関わっており、HD-2D版『ドラゴンクエストI&II』の制作に携わっているほか、Nintendo Switch向け新作『転生ゲーム(仮称)』のアドバイザーも務めています。「死ぬまでドラクエを作り続ける」と公言しており、2036年のドラクエ50周年を目標に掲げています。
なお、アベル伝説の監督を務めたりんたろう氏は、日本を代表するアニメ監督として知られ、『銀河鉄道999』『メトロポリス』などの代表作があります。
アベル伝説を見るなら動画配信がおすすめ
アベル伝説は現在、Amazon Prime Videoやdアニメストアなどの動画配信サービスで視聴することができます。配信されているのは全42話に再編集されたバージョンで、第1部の打ち切り最終回の展開がカットされ、第2部の完結まで一続きのストーリーとして楽しめる構成になっています。
当時リアルタイムで視聴していたファンの中には、打ち切り最終回の衝撃だけが記憶に残っている方も多いでしょう。配信版であれば、物語の盛り上がりから最終決戦まで途切れることなく、本来のハッピーエンドを安心して見届けることができます。第2部が関東ローカルだったために見られなかったという方にとっては、初めて結末を知る機会にもなるはずです。
また、2007年にはコンプリートDVD-BOXが限定生産で発売されており、オリジナル版の全43話を収録しています。打ち切り版の最終回を含むオリジナル放送版と、再編集された配信版の両方を比較して楽しむこともできます。声優は主人公アベルを古谷徹氏、ヒロインのティアラを勝生真沙子氏が担当しており、豪華キャストによる演技も見どころです。

