2019年に月9枠で放送されたドラマ『シャーロック アントールドストーリーズ』は、最終回の展開に対して「ひどい」「モヤモヤする」という声が多く上がった作品です。最大の原因は、全11話かけて引っ張った宿敵・守谷の正体が最終回で唐突に登場し、視聴者に「誰?」という困惑を残したことにあります。この記事では、最終回が批判された具体的な理由と、打ち切りだったのかどうかの検証、脚本家の現在までを解説します。
| 作品名 | シャーロック アントールドストーリーズ |
|---|---|
| 脚本 | 井上由美子 |
| 演出 | 西谷弘 |
| 放送局 | フジテレビ(月9枠) |
| 放送期間 | 2019年10月7日〜12月16日(全11話+特別編) |
| 主演 | ディーン・フジオカ、岩田剛典 |
| 打ち切り判定 | 🟢 打ち切りではない(完結済み) |
シャーロック(月9)の最終回がひどいと言われる理由
ディーン・フジオカ主演のドラマ『シャーロック』は、一話完結型の推理ドラマとして放送されました。各話の事件やキャストの演技には一定の評価がありましたが、最終回の放送後にSNSや感想サイトには不満の声が相次ぎ、特に物語の縦軸に関する不満が集中しました。
理由1:宿敵・守谷の正体が最終回まで引っ張られた
本作では、原作のモリアーティ教授に相当する「守谷」という人物が物語の縦軸として描かれていました。序盤から守谷の存在はほのめかされ、主人公・誉獅子雄(ほまれ ししお)が執着する相手として繰り返し名前が登場します。
しかし、守谷が実際に画面に登場したのは最終回の第11話になってからでした。全11話のうち10話分を費やして名前だけ出し続けた結果、視聴者には「結局、守谷って誰なのか」というフラストレーションが蓄積されていました。
守谷役を演じたのは俳優の大西信満さんですが、最終回で突然登場したため、視聴者からは「3ヶ月観てきたのに、最後に出てきた人に何の思い入れもない」という声が多く上がりました。ドラマの感想サイトでも「誰だおまえ」感が強かったと指摘されています。
原作のモリアーティ教授はシャーロック・ホームズの最大の宿敵として丁寧に描かれる存在です。それと比較して、本作の守谷は描写の積み重ねが不足しており、宿敵としての説得力に欠けるという批判が集中しました。
BBC版『SHERLOCK/シャーロック』ではモリアーティを演じたアンドリュー・スコットが序盤から強烈な存在感を放ち、シャーロックとの対比が効果的に描かれていました。同じ原作をベースにしているだけに、BBC版と比較されて本作の守谷の扱いが物足りなく感じられた視聴者も少なくなかったようです。
理由2:獅子雄が守谷にこだわる動機が不明瞭だった
最終回のもう一つの大きな問題は、主人公・獅子雄がなぜ守谷にこだわり続けるのか、その動機が明確に示されなかったことです。視聴者は11話分の物語を通じて「獅子雄と守谷の因縁の真相」が明かされることを期待していました。
ところが最終回において、獅子雄自身が守谷への執着の理由を問われた際に明確な回答を示さないという展開が描かれました。主人公本人が自分の動機を説明できないという構成は、視聴者の期待を大きく裏切る結果となっています。
推理ドラマにおいて、登場人物の行動原理が不透明なまま物語が閉じることは致命的です。視聴者は「動機が弱すぎる」「結局何がしたかったのかわからない」と感じ、それが「ひどい」という評価に直結しました。
原作のホームズとモリアーティの関係は、互いの知性を認め合う対等なライバルとして成立しています。本作でもそうした関係を構築しようとした形跡はありますが、守谷の描写が圧倒的に足りなかったため、獅子雄の執着に視聴者が感情移入できない状態でした。
理由3:一話完結型と縦軸ストーリーの両立に失敗した
本作は基本的に一話完結型のフォーマットを採用しており、毎回異なる事件を獅子雄と若宮が解決するという構成でした。各話の事件自体には評価する声も多く、キャストの演技やバディ感については好意的な意見が目立ちます。
しかし問題は、一話完結の事件を処理しながら守谷という縦軸を並行して描く必要があったにもかかわらず、縦軸のストーリーにほとんど尺が割かれなかったことです。各話で守谷に関する情報がほんの少しだけ提示される程度で、物語全体を貫く大きな流れが構築されませんでした。
その結果、最終回で一気に守谷との対決を描こうとしても、視聴者にとっては唐突な展開に感じられました。「10話分のツケを1話で回収しようとした」「無理やり話を広げてからクシャッと丸めてぶん投げた」という厳しい感想が寄せられています。
一話完結型のドラマで縦軸を持たせる手法自体は珍しくありませんが、本作では両者のバランスが取れていなかったと言えるでしょう。
理由4:特別編でも謎が解決されなかった
最終回の翌週(2019年12月23日)には特別編が放送されました。多くの視聴者は、最終回で残されたモヤモヤが特別編で解消されることを期待していました。
しかし特別編でも守谷の真相や獅子雄の過去について明確な回答は示されませんでした。「アントールドストーリーズ(語られざる物語)」というサブタイトルの通り、意図的に謎を残す構成だったとも解釈できますが、視聴者にとっては「結局何も解決しなかった」という印象が残る結果となっています。
特別編の視聴率は7.7%と、全11話の平均を下回りました。最終回への不満から視聴を離脱した層がいたことがうかがえます。
ドラマの感想ブログでは「守谷も獅子雄の真相もアントールドのまま」と皮肉交じりに評されています。タイトルに込められた「語られざる物語」というコンセプトが、結果的に物語を完結させない言い訳のように受け取られてしまった側面があります。
シャーロック(月9)は打ち切りだったのか?
最終回の展開が消化不良だったことから、「打ち切りだったのでは?」という疑問を持つ視聴者もいます。結論から言うと、本作は打ち切りではありません。全11話+特別編を予定通り放送し、さらに劇場版まで制作されているため、打ち切りとは言えない作品です。
打ち切りではない根拠
まず、全11話という話数は月9ドラマとしては標準的な長さです。2019年前後の月9枠は10〜11話が一般的であり、話数が短いために打ち切られたという事実はありません。
さらに、最終回の翌週に特別編が放送されています。打ち切り作品であれば特別編の制作・放送は行われないのが通常です。特別編まで含めると全12回の放送であり、当初の予定通りに完結したと考えられます。
加えて、2022年6月17日には劇場版『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』が公開されています。ドラマ終了から約2年半後に映画化が実現しており、シリーズとして継続する価値があると制作側が判断していたことがわかります。
演出を担当した西谷弘さんは『ガリレオ』シリーズなど多くの月9作品を手がけた実績のあるディレクターです。制作陣の布陣から見ても、本作は最初から全11話+特別編の構成で企画されていたと考えるのが自然です。
駆け足展開だったのか
最終回が「ひどい」と評価された主な原因は、打ち切りによる駆け足展開ではなく、シリーズ全体の構成上の問題です。一話完結型に重きを置きすぎた結果、縦軸の守谷ストーリーに十分な尺を確保できなかったことが根本的な原因と考えられます。
また、最終回では守谷と獅子雄が対峙する場面に加え、拘置所からの脱走シーンなど説得力に欠ける描写があったという指摘もあります。推理ドラマとしてのリアリティを重視していた視聴者にとっては、最終回だけアクション寄りの展開になったことへの違和感も「ひどい」という評価の一因になっています。
初回の視聴率は12.8%と月9としては合格ラインのスタートでしたが、第2話で9.3%に急落し、以降は一桁台が続きました。全話平均は9.9%で、前作『監察医 朝顔』まで5作連続で二桁平均を記録していた月9枠の流れを止める結果となっています。
視聴率の低迷は事実ですが、これは打ち切りの証拠ではありません。月9枠では視聴率が一桁でも予定通りの話数で完結するケースが多く、本作もその例に当てはまります。
なお、二桁を記録したのは初回の12.8%ともう1回のみで、大半のエピソードは8〜10%の範囲で推移しました。視聴率としては厳しい数字でしたが、推理ドラマとしての完成度や主演2人のバディ感には根強い支持があり、全話通して視聴したファンも多い作品です。
劇場版の制作が打ち切り説を否定している
打ち切り作品が劇場版に展開されることは極めて異例です。『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』はディーン・フジオカと岩田剛典がドラマ版と同じ役で出演しており、シリーズとしての連続性が保たれています。
劇場版は公開初週の週末興行ランキングで5位にランクインしました。ドラマの視聴率は苦戦しましたが、映画化が実現したこと自体が、シリーズが打ち切りではなかったことを示しています。
なお、劇場版は原作の『バスカヴィル家の犬』をベースにしたオリジナルストーリーで、ドラマ版の世界観を引き継いでいます。公開に合わせてドラマ版の再放送やBlu-ray発売も行われており、フジテレビがシリーズを継続的に展開しようとしていたことがわかります。
脚本家・井上由美子の現在
『シャーロック』の脚本を手がけた井上由美子さんは、『きらきらひかる』『白い巨塔』『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』『緊急取調室』シリーズなど数多くのヒットドラマを生み出してきたベテラン脚本家です。1991年にデビューして以来、社会派ドラマや法廷ドラマの名手として高い評価を受け続けています。
井上由美子の最新作
井上由美子さんは『シャーロック』以降も精力的に活動を続けています。2024年には木村拓哉主演のドラマ『Believe-君にかける橋-』(テレビ朝日系)の脚本を担当しました。
2025年には第76回NHK放送文化賞を受賞しており、脚本家としての評価はさらに高まっています。30年以上にわたってテレビドラマの第一線で活躍し続けている実力派です。
井上由美子さんは法廷ドラマや社会派ドラマを得意とする脚本家として知られています。『シャーロック』は推理・ミステリージャンルへの挑戦でしたが、本作の脚本に対しては「各話の事件は面白いのに、全体の構成に問題があった」という評価が多く見られます。
シャーロック劇場版について
ドラマ終了後の展開として、2022年に劇場版『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』が公開されました。西谷弘監督がドラマに引き続きメガホンを取り、ドラマ版のキャスト・スタッフが再集結した作品です。
ドラマの最終回で残された謎を意識した作りになっており、ドラマ版で不完全燃焼だったファンの受け皿としての役割も果たしています。現在はAmazon Prime Videoなどの動画配信サービスでドラマ版・劇場版ともに視聴可能です。
シャーロック(月9)を配信で視聴するには
ドラマ『シャーロック アントールドストーリーズ』全11話と特別編は、現在Amazon Prime Videoで配信されています。劇場版『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』もAmazon Prime Videoで視聴可能です。
ドラマ版を視聴してから劇場版を観ることで、獅子雄と若宮のバディ関係やシリーズ全体の流れをより深く楽しめます。ドラマ版は一話完結型なので、気になるエピソードだけ観るという視聴方法も可能です。
劇場版はドラマ版の知識がなくても楽しめる構成になっていますが、獅子雄と若宮の関係性を理解しておくとより没入感が増します。ドラマ全11話を観た上で劇場版に進むのがおすすめの視聴順です。
なお、フジテレビの見逃し配信サービスTVerでも期間限定で配信されることがあります。視聴環境に応じて配信サービスを選ぶとよいでしょう。

