『脳外科医 竹田くん』は、2023年7月の第142話を最後に連載が止まっており、打ち切りではなく「連載休止」の状態です。モデルとなった医師からの発信者情報開示請求や刑事告訴といった法的圧力が、連載停止に影響した可能性が指摘されています。この記事では、連載が止まった経緯・法的トラブルの詳細・作者の現在について解説します。
| 作品名 | 脳外科医 竹田くん |
|---|---|
| 作者 | 「脳外科医 竹田くん」製作委員会(医療過誤被害者の親族) |
| 連載誌 / 放送局 | はてなブログ(個人Web連載) |
| 連載期間 | 2023年1月〜2023年7月(全142話) |
| 巻数 | 書籍化なし(はてなブログで全話無料公開) |
| 打ち切り判定 | 🟡 打ち切り疑惑あり |
脳外科医竹田くんが打ち切りと言われている理由
『脳外科医 竹田くん』は商業誌の連載作品ではなく、はてなブログでの個人連載です。そのため出版社による「打ち切り」という概念は厳密には当てはまりません。しかし、2023年7月22日の第142話を最後に更新が止まっていることから、読者の間では「実質的な打ち切りだ」という声が上がっています。
理由1:第142話を最後に突然更新が止まった
本作は2023年1月24日の第1話から、ほぼ1日1話というハイペースで連載されていました。約半年間で142話という驚異的なペースで物語が進んでおり、読者は毎日のように新しいエピソードを読めることが当たり前になっていました。
しかし、2023年7月22日に投稿された第142話「霧」を最後に、更新が完全にストップしています。作者は最終話の時点で「続編の製作時期は未定」と述べており、明確な完結宣言もされていません。「完結」ではなく「未定」という言葉を選んでいる点が、打ち切り説に拍車をかけています。
物語は全三部構成で、第一部「竹田くん編」(第1話〜第58話)、第二部「告発篇」(第59話〜第106話)、第三部「隠蔽工作篇」(第107話〜第142話)と進みました。第三部では脳神経外科学会から病院が処分を受けた経緯までを描いていますが、実際の事件にはその後の刑事裁判や民事裁判といった展開が続いており、物語として描ける余地はまだ残されていました。
この「完結でも打ち切りでもない宙ぶらりんな状態」が2年以上続いていることが、打ち切り説を生む大きな原因になっています。
理由2:モデル医師からの法的圧力
打ち切り説が根強い最大の理由は、漫画のモデルとなった医師側からの法的アクションです。本作は兵庫県赤穂市民病院で実際に起きた医療事故をモチーフにしており、登場人物には実在のモデルがいます。そのモデル医師が、2023年10月に作者に対して発信者情報開示請求を行いました。
発信者情報開示請求とは、インターネット上の匿名の発信者の身元を特定するための法的手続きです。2024年7月には東京地裁がプロバイダに対し、作者の住所・氏名の開示を命じる決定を出しています。連載中は匿名で活動していた作者の身元が、法的手続きによって特定されたことになります。
さらに、モデル医師は作者らを名誉毀損罪で刑事告訴していたことも後に明らかになりました。連載の停止時期(2023年7月)と開示請求の時期(2023年10月)は近接しており、法的トラブルの兆候が連載停止に影響した可能性は否定できません。
個人ブログでの連載という性質上、出版社のような法務部門や顧問弁護士によるサポート体制がなく、作者個人が法的リスクを一手に負う構図になっていました。この点が商業連載の打ち切りとは根本的に異なる事情です。
理由3:連載中からの内容修正と関係者の反応
『脳外科医 竹田くん』は連載中から、公開済みのエピソードに修正が入ることがありました。セリフの変更や表現の調整が複数回行われており、これは関係者からの指摘やクレームを受けた結果と考えられています。
実在の医療事故をモチーフにした作品である以上、登場人物のモデルとなった人物やその関係者が内容に反応するのは避けられません。特に本作は、事故を起こした医師だけでなく、病院の管理体制や行政の対応にまで踏み込んだ内容であったため、多方面からの反応があったとみられます。
修正が重なるにつれ、読者の間でも「このまま連載を続けられるのか」「関係者からの圧力で止められるのでは」という懸念が広がっていました。結果的に、連載が止まった時期と法的圧力が強まった時期が重なっていることから、「外部からの圧力で事実上打ち切られた」という見方が定着しています。
脳外科医竹田くんは本当に打ち切りなのか?
『脳外科医 竹田くん』が「打ち切り」かどうかを判断するには、商業漫画とは異なる基準で見る必要があります。個人ブログ連載という特殊な形態ゆえに、従来の「打ち切り」の定義がそのまま当てはまるわけではありません。
打ち切り説を支持する根拠
打ち切り説を支持する最大の根拠は、作者が自ら連載を終えたとは一度も明言していない点です。「続編の製作時期は未定」という表現は「完結」とは明確に異なります。作者が物語を描き切ったと判断しているのであれば「完結」と宣言するのが自然ですが、それがなされていません。
また、連載停止後にモデル医師からの法的アクションが次々と明らかになったことも、「書きたくても書けない状況に追い込まれた」という解釈を裏付けています。2025年2月に作者が声明文を公開した際には、「開示されて3年間、怯え続けなければいけない」と語っており、法的圧力が精神的な負担になっていたことがうかがえます。
さらに、本作のモチーフとなった赤穂市民病院の医療事故は、連載停止後も刑事裁判や民事裁判が進行しており、描くべき「続き」が現実の世界で起き続けています。にもかかわらず連載が再開されないこと自体が、何らかの障壁の存在を示唆していると言えるでしょう。
打ち切りではないと考えられる根拠
一方で、物語自体は一定の区切りを迎えています。全三部構成のうち第三部「隠蔽工作篇」まで描かれ、脳神経外科学会から病院が処分を受けるところまで到達しました。竹田くん(モデル医師)が起こした医療事故の全容と、それを隠蔽しようとする病院の姿勢が明らかになるという、作品の核心部分は描ききっています。
また、本作は商業誌の連載ではないため、出版社や編集部の判断による「打ち切り」という概念がそもそも存在しません。掲載メディアがはてなブログである以上、連載の開始も終了も作者の意思に委ねられています。プラットフォーム側が連載を中止させたという情報もありません。
2025年3月に作者がモデル医師を相手取り「漫画は名誉毀損にあたらない」ことの確認を求める訴訟を大阪地裁に起こしていることから、作者には作品を守りたいという強い意志があることがわかります。名誉毀損にあたらないことが裁判で確定すれば、連載再開への法的ハードルが下がる可能性があります。
結論:「法的圧力による実質的な連載停止」が実態に近い
総合すると、『脳外科医 竹田くん』は商業漫画的な意味での「打ち切り」ではありません。しかし、作者が自由に連載を継続できる状態にないことも事実です。
モデル医師からの開示請求と刑事告訴、それに伴う精神的負担を考慮すると、「法的圧力による実質的な連載停止」というのが最も正確な表現でしょう。作者自身が法廷で作品の正当性を主張している最中であり、今後の裁判の結果次第で状況が変わる可能性も残されています。
脳外科医竹田くんの作者の現在
長らく匿名で活動していた作者ですが、2025年以降は積極的に表舞台に出てきており、法的にも動きを見せています。
被害者親族であることの公表
2025年2月5日、作者ははてなブログ上で声明文を公開し、自身が2020年1月に赤穂市民病院で発生した医療過誤の被害者親族であることを明らかにしました。連載中は「脳外科医 竹田くん製作委員会」というクレジットのみで、作者の素性は一切不明のままでした。
声明文の中で作者は「一連の医療事故が闇に葬られていくプロセスを克明に描くことで、救済を受けることもなく苦しんでいる人々が数多く存在しているという社会問題に目を向けていただきたかった」と執筆の動機を語っています。漫画が単なるフィクションではなく、当事者による告発であったことが明確になり、大きな反響を呼びました。
この公表は、モデル医師側から身元を開示されたことへの対応という側面もあります。作者は「開示されたことで3年間怯え続けなければならない状況」に追い込まれたと述べており、自ら名乗り出ることで主導権を取り戻す意図があったとみられます。
モデル医師への提訴と法廷での闘い
2025年3月5日、作者はモデル医師に対し、漫画が名誉毀損にあたらないことの確認を求める債務不存在確認訴訟を大阪地裁に提起しました。3月11日には大阪市内で記者会見を開き、提訴の経緯を説明しています。
債務不存在確認訴訟とは、相手から損害賠償を請求される前に「そもそも賠償義務が存在しない」ことを裁判所に確認してもらう訴訟です。作者はこれを「先手を打って心身の安定をはかりたい」という判断から選択したと説明しています。
一方、モデル医師が作者らを名誉毀損罪で刑事告訴していた件について、神戸地検姫路支部は不起訴処分としました。刑事面では作者側の主張が認められた形であり、漫画の内容が刑事上の名誉毀損にはあたらないと検察が判断したことになります。
モデル医師をめぐるその後の展開
漫画のモデルとなった医師は、2024年12月27日に業務上過失傷害の罪で在宅起訴されました。赤穂市民病院の脳神経外科に2019年7月から2021年8月まで在籍し、その間に8件の医療事故(うち3件は死亡事例)に関与したとされる人物です。
2025年5月14日には、神戸地裁姫路支部が医師と赤穂市に対し、被害者への約8,900万円の賠償支払いを命じる判決を下しています。漫画で描かれた医療事故の深刻さが司法の場でも認定されたことで、作品の社会的意義が改めて注目されました。
漫画が問題提起した内容が現実の裁判でも立証されつつあるという事実は、作品の正当性を裏付ける材料になっています。今後の民事訴訟の結果が、連載再開の可能性にも影響を与えるかもしれません。
脳外科医竹田くんはどこで読める?
『脳外科医 竹田くん』は書籍化されておらず、電子書籍としても販売されていません。全142話すべてが、はてなブログの公式ページで現在も無料公開されています。
商業出版されていない理由は明らかにされていませんが、実在の事件をモチーフにしており、モデル医師との間で法的係争が続いている状況では、出版社が法的リスクを懸念して書籍化に踏み切れない可能性が考えられます。現時点で読む手段は公式ブログのみです。
作品は全三部構成となっており、第一部「竹田くん編」(第1話〜第58話)では竹田くんが赤池市民病院に着任してから医療事故を繰り返す様子を、第二部「告発篇」(第59話〜第106話)では事故の内部告発と病院の対応を、第三部「隠蔽工作篇」(第107話〜第142話)では学会の処分と隠蔽の実態を描いています。
脳外科医竹田くんが話題になった背景
本作がここまで大きな注目を集めた背景には、作品の質だけでなく、現実の医療問題と直結するテーマ性がありました。
SNSでの爆発的な拡散
『脳外科医 竹田くん』は2023年前半にSNS上で爆発的に拡散されました。実在の医療事故をベースにしたリアリティのある描写と、「こんな医師が本当にいたのか」という衝撃が、多くの読者を引きつけました。
はてなブログという個人メディアでの連載にもかかわらず、主要メディアでも取り上げられるほどの話題作となり、「竹田くん」というワードがネット上でトレンド入りする事態にまで発展しています。医療関係者からも注目を集め、医療安全や病院管理体制に関する議論を呼び起こしました。
この異例の注目度が、裏を返せばモデル医師や関係者からの反応を招くことにもつながりました。作品の影響力が大きくなるほど、法的リスクも高まるという構図がありました。
医療安全の議論を喚起した社会的意義
本作が単なるエンターテインメントにとどまらず社会的な意義を持つのは、日本の医療事故調査制度の問題点を浮き彫りにした点にあります。2025年3月には、元衆議院議員の橋本岳氏が「漫画『脳外科医 竹田くん』と医療事故調査制度」と題したブログ記事を公開するなど、政治家や医療政策の専門家からも言及される作品となりました。
「事故を起こす医師をどうやって止めるのか」「病院の管理体制はなぜ機能しなかったのか」という問いは、赤穂市民病院に限らず日本の医療システム全体に関わる問題です。漫画という形で広く一般に知れ渡ったことで、医療安全に対する社会的関心を高める効果がありました。
連載が止まった現在もブログ上で全話が公開され続けていることで、新たな読者が作品にアクセスし続けています。打ち切り(連載停止)の状態にありながら、作品の社会的影響力はむしろ時間とともに強まっているとも言えるでしょう。

