ドラマ「桜の塔」の最終回は、復讐劇としてのカタルシスが弱い・説明台詞が多い・主人公の行動に矛盾があるといった点で「ひどい」と言われています。2021年にテレビ朝日系の木曜ドラマ枠で放送された本作は、玉木宏演じる警察官僚の出世と復讐を描いた社会派サスペンスでした。この記事では、最終回が批判された具体的な理由と、打ち切りだったのかどうかの真相、脚本家・武藤将吾の現在の活動までを詳しく解説します。
| 作品名 | 桜の塔 |
|---|---|
| 脚本 | 武藤将吾(オリジナル脚本) |
| 放送局 | テレビ朝日(木曜ドラマ枠) |
| 放送期間 | 2021年4月15日〜6月10日(全9話) |
| 主演 | 玉木宏 |
| 主題歌 | 宮本浩次「sha・la・la・la」 |
| 打ち切り判定 | 🟢 打ち切りではない(完結済み) |
桜の塔の最終回がひどいと言われる理由
「桜の塔」は2021年6月10日に放送された最終回(第9話)の直後からSNSやレビューサイトで賛否が大きく分かれました。映画・ドラマのレビューサイトFilmarksでは1,600件以上の感想が投稿されており、5点満点中3.4点と中程度の評価にとどまっています。ここでは「ひどい」と言われた主な理由を3つに整理して解説します。
理由1:復讐劇なのにハッピーエンドで拍子抜け
最終回に対する批判で最も多かったのが、復讐劇として期待していたのに、まさかのハッピーエンドだったという声です。主人公・上條漣(玉木宏)は、父・勇仁を自殺に追い込んだ千堂への復讐のために5年間にわたって警察組織内での出世を計画してきた人物です。
物語の中盤までは、漣が手段を選ばず権力闘争を繰り広げる姿がダークヒーローとして描かれていました。恋人であり千堂の娘でもある優愛(仲里依紗)すら復讐の駒として利用する冷徹さに、視聴者は「この復讐劇の結末はどうなるのか」と緊張感を持って見守っていたはずです。
しかし最終回では千堂が失脚した後、漣を含む主要キャラクターの多くが救われる結末を迎えました。「あまりにもハッピーエンドな最終回で、正直拍子抜け」という視聴者の感想に代表されるように、それまでの8話分のシリアスな展開との温度差を問題視する声が相次ぎました。
復讐を軸にしたサスペンスドラマでは、復讐の完遂と引き換えに主人公が何かを失ったり、後味の苦い結末が描かれたりすることが多いものです。それだけに、全員が報われるようなラストは「重厚な物語を追ってきた8週間を返してほしい」と感じた視聴者が少なくなかったようです。
特に、千堂派のメンバー全員が改革派に鞍替えして組織が自然消滅するという決着のつけ方には「都合が良すぎる」という反応が目立ちました。権力闘争をリアルに描いてきた作風との乖離を感じたファンも多かったのでしょう。
理由2:最終回の前半が説明台詞で構成されていた
最終回の構成面・演出面での批判も多く見られました。特に問題視されたのが、放送開始から約30分間にわたって同じ場所でのやり取りが延々と続き、物語の真相が登場人物の台詞による説明で処理されたという点です。
具体的には、千堂が漣の父・勇仁を自殺に追い込んだ経緯や、拳銃横流し事件の黒幕が警視総監・矢上彰文であったことなど、物語の核心部分が登場人物同士の会話によって一気に明かされました。回想シーンや視覚的な演出・フラッシュバックではなく、ほぼ台詞のみで情報が伝えられる形式だったため、テンポの悪さを指摘する声が上がっています。
レビューサイトには「サスペンスとしてはもっとスリリングに見せてほしかった」「ドラマというより舞台の朗読劇のように感じた」といった感想が投稿されています。最終回ならではのクライマックス感やアクション要素を期待していた視聴者にとっては、動きの少ない展開が物足りなかったのでしょう。
9話という限られた尺の中で多くの伏線を回収しなければならなかった事情もあるかもしれません。しかし結果として「説明で終わった」という印象を残してしまったことは、最終回の評価を下げる大きな要因になりました。
なお、武藤将吾脚本の「3年A組」でも最終回は教室での長い独白が中心でしたが、あちらは「SNSでの誹謗中傷」という社会的メッセージが視聴者に刺さり高評価を得ています。「桜の塔」の場合は警察内部の権力構造という題材がやや身近さに欠け、説明的な展開がより冗長に感じられたのかもしれません。
理由3:主人公の正義感と行動が矛盾している
物語を通じて「正義とは何か」「警察とは何か」をテーマに掲げてきた本作ですが、最終回での主人公・漣の行動にはSNSで少なからず疑問の声が上がりました。「正義とは何か」に結論を見出した人物が、大切に思ってきた幼馴染の水城翔(岡田健史)を撃とうとするのは矛盾しているという指摘です。
また、漣は作中で恋人であり千堂の娘でもある優愛の心を支配し、復讐の駒として利用してきました。「人として最低なことをしている」主人公が亡き父を想って涙ながらに語る場面にも共感できないという意見は、物語のテーマそのものへの不信感につながっています。
一方で、この矛盾こそが「正義とは何か」を視聴者自身に問いかける仕掛けだったとする肯定的な見方も存在します。Real Soundでは最終回を「鮮やかな伏線回収劇」と評しており、第1話からゆっくりと張られてきた伏線が最終話で回収される構成を高く評価しています。
最終回では仲里依紗演じる優愛への同情の声がSNSで特に大きく広がりました。cinemacafe.netの記事でも「切ない」「気の毒」という反応が紹介される一方、広末涼子演じる爽と岡田健史演じる富樫のその後には祝福の声が寄せられており、キャラクターごとに視聴者の受け止め方が大きく異なった最終回でした。
結局のところ、「桜の塔」の最終回が「ひどい」と言われる最大の理由は、物語の完成度そのものよりも「期待していたものと違った」というギャップにあると言えます。8話までの重厚な権力闘争サスペンスが、最終回で意外な方向に着地したことによる落差が、視聴者の不満として噴出した形です。
桜の塔は打ち切りだったのか?
「桜の塔」は全9話で完結しましたが、「話数が少ない=打ち切りでは?」と疑問を持つ視聴者もいるようです。しかし結論から言えば、「桜の塔」は打ち切りではありません。全9話は最初から予定された放送回数であり、視聴率も安定していました。以下にその根拠を詳しく整理します。
全9話はテレビ朝日・木曜ドラマ枠の通常話数
テレビ朝日の木曜ドラマ枠(木曜21時台)では、1クールあたり全9話〜10話で放送される作品が標準的です。「桜の塔」と同じ枠で放送された前後の作品を見ても、同様の話数で完結しているケースが多く、全9話は当初の編成段階から決まっていた放送回数と考えてよいでしょう。
連続ドラマの話数は放送枠・クール編成・次番組との兼ね合いなどで決まるため、全9話という長さだけで打ち切りと判断することはできません。全10話の作品と比べて1話少ないだけであり、内容が削られた形跡もありません。近年の日本の連続ドラマは全体的に話数が短縮される傾向にあり、全9話は珍しい数字ではなくなっています。
さらに注目すべき点として、本編の放送中である2021年5月6日から、動画配信プラットフォーム「TELASA(テラサ)」にて岡田健史主演のスピンオフ「桜の塔アナザーストーリー」(全3話)の独占配信が開始されています。打ち切りが想定されていた作品に対してスピンオフを制作・配信するのは通常考えにくく、この事実は打ち切りではなかったことを裏付ける有力な根拠です。
視聴率は全話を通じて安定していた
「桜の塔」の視聴率は、最終回(第9話)で10.5%を記録しました。全話を通じておおむね10%前後で推移しており、極端な低下は見られませんでした。2021年春ドラマの平均視聴率ランキングでは3位にランクインしており、同期のドラマの中でも上位の成績です。
視聴率の急落によって放送局が打ち切りを判断するケースとは、明らかに状況が異なります。テレビ朝日としても、安定して2桁前後の数字を維持していた「桜の塔」を途中で終了させる理由はなかったと考えられます。
日刊ゲンダイでは「玉木宏だからハマった?2ケタ視聴率キープの謎」と題した記事が放送中に掲載されており、安定した視聴率は当時のメディアでも注目されていました。主演・玉木宏の存在感に加え、仲里依紗・広末涼子・岡田健史・椎名桔平といった豪華キャストの演技力が数字を支えていたとの分析もあります。
ストーリーは最終話まで描き切られている
打ち切り作品にありがちな特徴として、伏線が回収されないまま唐突に終わる・物語が途中で投げ出される・最終回で一気に話が飛ぶといった現象があります。しかし「桜の塔」の場合、漣の父を自殺に追い込んだ黒幕の正体、千堂の失脚の経緯、拳銃横流し事件の真相といった物語の主要な謎がすべて最終回で決着しています。
ハッピーエンドすぎる・説明台詞が多いという批判はあるものの、それは「描き方」への不満であって「描かれなかった」という不満ではありません。物語としては予定通りの結末を迎えており、打ち切りで話数を削られた作品に見られるような伏線の放置や唐突なエンディングとは明らかに性質が異なります。
千堂派のメンバー全員が改革派に移行して組織が再編されるラストも、物語の着地点として意図的に設計されたものと考えられます。最終回の満足度には個人差がありますが、ストーリー構成上は最後まで描き切られた作品です。「最終回がひどい=打ち切り」と結びつけて考える視聴者もいますが、この2つは別の問題として切り分けて考える必要があります。
桜の塔の脚本家・武藤将吾の現在
「桜の塔」は原作小説や漫画を持たない完全オリジナル脚本の作品です。脚本を手がけたのは武藤将吾で、「電車男」(2005年)や「花ざかりの君たちへ〜イケメンパラダイス〜」(2007年)といった初期の代表作から、近年の「3年A組−今から皆さんは、人質です−」(2019年)まで、数多くの話題作を手がけてきた人気脚本家です。
武藤将吾の代表作と最新の活動
武藤将吾は「桜の塔」以前にも「家族ゲーム」(2013年)や「ニッポンノワール−刑事Yの反乱−」(2019年)など、サスペンス色の強いオリジナルドラマを複数執筆してきました。特に「3年A組」は最終回の視聴率が15.4%を記録し、SNSでも大きな反響を呼んだ代表作として知られています。
「桜の塔」の後も精力的に活動を続けています。道枝駿佑がゴールデン帯の連続ドラマで初主演を務める完全オリジナルの青春サスペンスドラマの脚本を新たに担当するなど、一貫してオリジナル脚本へのこだわりを持ち続けている脚本家です。
武藤将吾の作風には「身近な組織(学校・警察など)を舞台にした緊張感のある群像劇」という一貫した特徴があります。「桜の塔」もその系譜に連なる作品であり、警視庁という巨大組織の権力闘争をオリジナル脚本で描くという意欲的な試みでした。
「桜の塔」の主演・玉木宏とのタッグも注目されたポイントです。玉木宏にとっては「鹿男あをによし」(2008年)以来のテレビ朝日連続ドラマ主演であり、ダークヒーロー的な役どころは新たな一面を見せる機会となりました。脚本と俳優の組み合わせとしても挑戦的な作品だったと言えるでしょう。
桜の塔はどこで見られる?配信情報
「桜の塔」はテレビ朝日系のドラマであるため、テレビ朝日が運営に関わる動画配信サービス「TELASA(テラサ)」で視聴できる可能性があります。TELASAではスピンオフ「桜の塔アナザーストーリー」の独占配信も行われていました。
また、TVerでは放送終了後も一定期間、見逃し配信が行われていました。現在の配信状況は時期によって変わるため、視聴を検討している方は各配信サービスの最新ラインナップを確認してみてください。
スピンオフ「桜の塔アナザーストーリー」は本編とは異なる視点で物語が描かれており、岡田健史演じる富樫遊馬が主人公です。本編では描かれなかった富樫側のエピソードが掘り下げられており、全3話と短いため本編を見終わった後に続けて視聴するのに適したボリュームになっています。

