『進撃の巨人 Before the Fall』は打ち切りではなく、全17巻で完結した作品です。前日談(プリクエル)という作品の性質上、巨人の脅威が続いたまま物語が終わるため「打ち切りでは?」と誤解されやすい構造になっています。この記事では、打ち切りと言われた理由と完結の経緯、作者の現在の活動について解説します。
| 作品名 | 進撃の巨人 Before the Fall |
|---|---|
| 作者 | 原作:諫山創 / 小説:涼風涼 / 漫画:士貴智志 / キャラクター原案:THORES柴本 |
| 連載誌 | 月刊少年シリウス(講談社) |
| 連載期間 | 2013年8月〜2019年3月(漫画版) |
| 巻数 | 全17巻(漫画版) / 全3巻(小説版・講談社ラノベ文庫) |
| 打ち切り判定 | 🟢 打ち切りではない(完結済み) |
『進撃の巨人 Before the Fall』が打ち切りと言われた理由
『進撃の巨人 Before the Fall』は完結済みの作品ですが、ネット上では「打ち切りだったのでは」という声が根強く見られます。その背景には、作品の構造や本編との関係性からくるいくつかの誤解があります。
理由1:前日談ゆえに「巨人の脅威が解決しないまま終わる」構造
『Before the Fall』は、本編『進撃の巨人』の約70年前を舞台にした前日談です。物語の中心は、巨人に対抗する唯一の武器「立体機動装置」がどのように誕生したかを描くことにあり、主人公キュクロの戦いと成長がストーリーの軸になっています。
最終話「新たなる時代へ」では、キュクロたちが巨人「オーガ」を討伐し、立体機動装置の実用化に道筋をつける形で物語が完結しています。しかし、巨人という存在そのものは当然ながら消滅しておらず、壁の外の脅威は本編の時代へと引き継がれます。
前日談という性質上、「世界そのものの問題は解決しないまま終わる」のは当然の構造であり、打ち切りとは異なります。本編の歴史に繋がる形で物語を締めくくっており、プリクエルとして計画通りの結末です。
ただし、本編のように「巨人との最終決戦」のようなカタルシスを期待していた読者にとっては、物足りなさを感じる終わり方だったかもしれません。「壁の中に戻って日常に戻る」という締めくくりは、爽快感よりも静かな余韻を残すタイプの結末です。
この「完結したのにスッキリしない」という感覚が、打ち切り説につながったと考えられます。前日談の宿命として避けがたい誤解だったと言えるでしょう。
理由2:検索サジェストによる誤解の拡散
GoogleやYahoo!で「進撃の巨人 Before the Fall」と検索すると、検索候補に「打ち切り」が表示されることがあります。これは実際に多くの人が「打ち切りかどうか」を気にして検索していることを意味しています。
検索サジェストは、ユーザーの検索行動の蓄積によって自動生成されるものです。つまり、前日談の終わり方に疑問を感じた読者が「打ち切り」と検索→サジェストに表示→それを見た別のユーザーが「本当に打ち切りだったのか」と誤解→さらに検索、という循環が発生しています。
この現象は他の完結済み作品でもよく見られるパターンです。実際に、ストーリーが完結していても「〇〇 打ち切り」がサジェストに残り続けるケースは珍しくありません。サジェストに「打ち切り」と出ること自体は、作品が実際に打ち切られたことを証明するものではありません。
特に『進撃の巨人』という超大作のスピンオフの場合、本編に比べて情報が少ないぶん「打ち切りだったのか?」という疑問が解消されにくく、サジェストが長期間にわたって残りやすいという側面もあります。
理由3:本編やほかのスピンオフと比べた知名度の差
『進撃の巨人』本編は累計発行部数1億4,000万部(2023年11月時点)を超える世界的ヒット作です。TVアニメも2013年から2023年にかけて4シーズンにわたって放送され、社会現象とまで言われました。一方、スピンオフである『Before the Fall』は本編ほどの注目を集めたとは言い難い状況でした。
『進撃の巨人』には複数のスピンオフ作品が存在します。『進撃!巨人中学校』は2015年にTVアニメ化されており、リヴァイの過去を描いた『悔いなき選択』はOAD(オリジナルアニメDVD)として映像化されました。しかし『Before the Fall』はアニメ化されておらず、メディア展開は漫画と小説にとどまっています。
アニメ化されなかったことで「人気がなかったから打ち切られたのでは」という推測が生まれた可能性があります。ただし、アニメ化の有無と打ち切りは直接関係がありません。アニメ化の判断には制作スタジオのスケジュールや権利関係など多くの要因が絡むため、アニメ化されないからといって打ち切りとは言えません。
実際に、本作は月刊少年シリウスで約5年半にわたって連載され、全17巻という十分なボリュームで完結しています。連載誌での扱いを見ても、途中で打ち切られた形跡はありません。
理由4:本編と比較した際の評価の厳しさ
『Before the Fall』のレビューや感想を見ると、「本編に比べると展開が緩い」「ご都合主義的な場面がある」「本編ほどの緊張感がない」といった意見が散見されます。本編の諫山創による容赦のない展開と比べると、キュクロの物語はやや穏やかな印象を受ける読者が多かったようです。
本編では主要キャラクターが次々と命を落とす過酷な世界観が描かれますが、『Before the Fall』では主人公キュクロが数々の困難を乗り越えて生き延びます。特に最終話では、キュクロとシャルルの結婚が描かれるなど、本編にはないハッピーエンド寄りの結末が用意されました。
これは漫画版オリジナルの要素で、小説版では描かれなかったシーンです。漫画を担当した士貴智志がキャラクターの結末を丁寧に描いた結果ですが、「進撃の巨人らしくない」という反応を招く一面もありました。
こうした「本編との温度差」が、作品全体の評価を厳しくし、結果として「打ち切りだったのでは」という憶測を生む一因になったと考えられます。しかし、読者の評価が分かれることと打ち切りは別の問題であり、低評価が即打ち切りを意味するわけではありません。
『進撃の巨人 Before the Fall』が打ち切りではない根拠
打ち切り説はあくまで誤解であり、本作は計画通りに完結した作品です。その根拠を複数の観点から確認していきます。
全17巻・約5年半の連載を全うしている
漫画版『Before the Fall』は2013年8月に月刊少年シリウスで連載を開始し、2019年3月に最終話を迎えました。連載期間は約5年半、単行本は全17巻です。
月刊少年シリウスは月刊誌であり、月刊連載で全17巻というのは十分なボリュームです。打ち切り作品であれば5年半もの長期連載は通常認められず、数巻で終了するのが一般的です。
原作小説(全3巻)の内容を最後まで漫画化し、さらに漫画版オリジナルの描写を加えた上で完結していることからも、打ち切りではなく予定通りの完結であることがわかります。
最終話で物語が整合性をもって締めくくられている
最終話「新たなる時代へ」では、主人公キュクロと宿敵シャウビィの共闘による巨人「オーガ」の討伐が描かれています。これは物語序盤から続くキュクロの因縁に決着をつけるものであり、打ち切り作品にありがちな「急に話が終わる」展開ではありません。
また、漫画版ではシャウビィとキュクロの和解、キュクロとシャルルの結婚といった、キャラクターの関係性にきちんと結末を与える描写が追加されています。こうした丁寧なエピローグは、制作側が十分な余裕を持って最終回を迎えたことを示しており、打ち切り作品では通常描かれないものです。
さらに、最終巻(17巻)の帯や巻末には「完結」の文字が明記されており、講談社としても正規の完結として扱っています。
スピンオフとしての役割を完遂している
『Before the Fall』の主軸は「立体機動装置はどのように生まれたか」という、本編では語られなかった歴史を描くことにあります。工匠アンヘルによる装置の開発、巨人を斬ることができる鉱物「黒金竹(くろがねたけ)」の発見、そして初めて巨人を倒す戦闘までが一貫して描かれています。
物語の終盤では、立体機動装置を実戦投入した新生調査兵団が壁外遠征に出発する場面が描かれ、本編の時代へと歴史が引き継がれる構成になっています。
つまり、前日談としての使命である「立体機動装置の誕生と実用化」を描き終えたことが、この作品の完結条件だったと言えます。巨人の脅威が解決しないのは、本編より前の時代を描く前日談として当然の帰結です。
漫画版と小説版の違い
『Before the Fall』は小説が先に発表され、その後に漫画化された作品です。それぞれの媒体での展開状況をまとめます。
| 媒体 | 現状 |
|---|---|
| 小説(講談社ラノベ文庫) | 全3巻(2011年12月〜2012年6月)完結 |
| 漫画(月刊少年シリウス) | 全17巻(2013年8月〜2019年3月)完結 |
小説版は涼風涼が執筆し、THORES柴本がイラストを担当しました。全3巻とコンパクトにまとまっていますが、漫画版では士貴智志の手によって全17巻にわたり物語が丁寧に膨らまされています。
特に最終盤の展開には漫画版オリジナルの要素が多く含まれています。小説版ではシャウビィは囮役にとどまりますが、漫画版ではキュクロとの本格的な共闘が描かれました。キュクロとシャルルの結婚描写も漫画版で初めて追加されたシーンです。
小説版と漫画版の両方がそれぞれの形でしっかりと完結していることも、打ち切りではないことを裏付ける根拠のひとつです。
『進撃の巨人 Before the Fall』の作者の現在
本作には複数のクリエイターが関わっています。それぞれの現在の活動状況を確認します。
士貴智志(漫画担当)の現在の活動
漫画版を手がけた士貴智志は、『Before the Fall』完結後も精力的に活動を続けています。手塚治虫の人気作品を原作とした『どろろと百鬼丸伝』を月刊少年チャンピオンで連載し、全13巻で完結させました。約7年半にわたる長期連載でした。
さらに現在は、タツノコプロ原作の『キャシャーンR』をチャンピオンクロスで連載中です。士貴智志は原作付き作品のコミカライズを得意とする漫画家として、途切れることなく作品を発表し続けています。
『Before the Fall』での精緻な作画やアクションシーンの描写力が評価され、『どろろと百鬼丸伝』でもダークファンタジーの世界観を見事に表現しています。
涼風涼(小説原作担当)の現在の活動
小説版の著者である涼風涼は、小説家・シナリオライター・漫画原作者として幅広く活動しています。現在は『リアデイルの大地にて』の漫画版で構成を担当しており、カドコミ(コミックウォーカー)にて連載が続いています。
涼風涼は高校卒業後に『真・女神転生デビルサマナー』のノベライズでデビューしたベテラン作家です。ゲームのノベライズやライトノベルの執筆、漫画の構成など、多岐にわたるジャンルで長年にわたり活動してきた人物です。
なお、『Before the Fall』の原作者である諫山創は、本編『進撃の巨人』を2021年に完結させた後、2023年に完結版の加筆修正を行いました。本編の完結により、『進撃の巨人』シリーズ全体が幕を閉じた形になっています。
『進撃の巨人 Before the Fall』を読むなら電子書籍がお得
『Before the Fall』は漫画版全17巻、小説版全3巻がすべて電子書籍で購入可能です。漫画版17巻を一気に揃える場合、1巻あたり約500円前後として合計8,500円程度になりますが、電子書籍であれば割引やポイント還元が適用されるケースが多く、まとめ買いに向いています。
本編『進撃の巨人』を読み終えた方が前日談として読むと、立体機動装置や調査兵団の歴史をより深く理解できるでしょう。本編では描かれなかった壁の中の初期の社会や、巨人を神と崇める「巨人教」という独自の設定も見どころです。
また、小説版から読んで漫画版と比較するという楽しみ方もあります。漫画版ならではのオリジナル展開や、士貴智志の迫力ある巨人の描写は、小説版とはまた違った魅力があります。

