『このサイテーな世界の終わり』(The End of the F***ing World)は打ち切りではなく、脚本家の判断によって完結した作品です。シーズン2で物語が終了しシーズン3が制作されなかったことから「打ち切りでは?」という声が上がりましたが、実際には制作側が物語の完結を選んだ結果です。この記事では、打ち切りと誤解された理由やシーズン3が作られない真相、脚本家の現在の活動について詳しく解説します。
| 作品名 | このサイテーな世界の終わり(The End of the F***ing World) |
|---|---|
| 原作 | チャールズ・フォースマン(グラフィックノベル、2013年刊行) |
| 脚本 | チャーリー・コヴェル |
| 放送局 / 配信 | Channel 4(イギリス)/ Netflix(海外配信) |
| 放送期間 | 2017年10月〜2019年11月(全2シーズン・全16話) |
| 出演 | アレックス・ロウザー、ジェシカ・バーデン |
| 打ち切り判定 | 🟢 打ち切りではない(完結済み) |
『このサイテーな世界の終わり』が打ち切りと言われた理由
Netflixで配信され日本でも人気を集めた本作ですが、「打ち切り」という検索が一定数あります。なぜ打ち切りだと誤解されたのか、その背景を3つの観点から見ていきましょう。
理由1:シーズン2で終了しシーズン3が制作されなかった
最大の理由は、シーズン2(2019年11月放送)をもってシリーズが終了し、シーズン3が制作されなかったことです。海外ドラマは人気があれば3シーズン、5シーズンと長く続くのが一般的なため、わずか2シーズンで終了したことが「打ち切られたのでは?」という疑念を生みました。
特にNetflixで配信されているドラマは、視聴データに基づいてシーズン更新の判断が行われることで知られています。Netflixが多くの作品をシーズン1〜2で打ち切る傾向があることは広く報じられており、本作もその一例だと受け取った視聴者がいたようです。
しかし実際には、放送局であるChannel 4は続編に前向きな姿勢を示していました。2019年12月にはChannel 4の担当者が追加シーズンの可能性について言及しており、局側がシリーズを打ち切ったわけではないことがわかります。本作はChannel 4が制作し、Netflixは海外配信権を持つパートナーという立場であったため、Netflixの判断で打ち切られたという見方も的外れです。
シーズン3が実現しなかったのは、脚本家チャーリー・コヴェルが「物語はここで完結した」と判断したためです。コヴェルは「これ以上続けようとするのは間違いだと思う。今の終わり方が気に入っている」と明言しています。つまり、視聴率や評価の問題で打ち切られたのではなく、クリエイター自身の意志で幕を閉じた作品です。
理由2:全16話・各話約20分という短い構成
本作はシーズン1が全8話、シーズン2も全8話の計16話で構成されています。さらに各エピソードの長さは約20分と、一般的な海外ドラマ(1話40〜60分)と比べてかなり短めです。全話を通しで観ても約5時間半程度で終わってしまいます。
日本で視聴する場合、Netflixのラインナップの中で他の大型ドラマと並んで表示されるため、「こんなに短いのは途中で打ち切られたからでは?」と感じる視聴者がいたのは自然なことかもしれません。実際、Netflixオリジナルドラマは1話50〜60分・1シーズン8〜10話が標準的で、それと比較すると本作のボリュームは半分以下です。
しかしこの短さは、原作グラフィックノベルのコンパクトな物語に合わせた意図的な構成です。原作者チャールズ・フォースマンのグラフィックノベルは2011年から2013年にかけてミニコミックとして発表された作品で、もともと長大なストーリーではありません。ドラマ版もその凝縮された物語の魅力を活かし、無駄を削ぎ落とした構成を選んでいます。
そもそもイギリスのドラマは、1シーズン6〜8話で完結する形式が主流です。『SHERLOCK/シャーロック』(1シーズン3話)、『フリーバッグ』(1シーズン6話)など、短い話数で高い完成度を持つ英国ドラマは数多くあります。アメリカのドラマと比べて話数が少ないのは、イギリスのドラマ制作文化に由来するものであり、打ち切りの兆候ではありません。
理由3:脚本家の次回作『KAOS』がNetflixに打ち切られた
脚本家チャーリー・コヴェルが手がけた次回作『KAOS』(カオス)は、ギリシャ神話を現代風にアレンジしたNetflixオリジナルドラマです。ジェフ・ゴールドブラム主演で2024年8月に配信が開始され、そのユニークな世界観で話題を集めました。
しかし『KAOS』は視聴数が期待に届かず、2024年10月にシーズン1限りでの打ち切りが発表されました。コヴェルは「3シーズンの構想があった」と語っており、「胸が張り裂ける思い(I’m gutted)」とコメントしています。制作費の大きさに見合う視聴者数を確保できなかったことが打ち切りの主な原因とされています。
この『KAOS』打ち切りのニュースが、同じコヴェルの過去作である『このサイテーな世界の終わり』にも「打ち切り」のイメージを波及させた可能性があります。「あの脚本家の作品は打ち切りになる」という印象が形成されやすい状況が生まれたのです。
ただし、両作品の終了事情は全く異なります。『KAOS』は制作側が続けたかったにもかかわらずプラットフォーム側の判断で打ち切られた作品であり、『このサイテーな世界の終わり』はクリエイター自身が物語の完結を選んだ作品です。この点を混同しないことが重要です。
『このサイテーな世界の終わり』が打ち切りではない根拠
打ち切り説が誤解であることを示す根拠は複数あります。作品の評価、制作側の発言、そして物語構造の面から、この作品が正当に完結したことを確認しましょう。
脚本家チャーリー・コヴェルが完結を明言している
最も明確な根拠は、脚本家本人の発言です。コヴェルはシーズン2の公開前から「このシリーズはこれで終わり」と公言していました。打ち切りを恐れて予防線を張ったのではなく、物語として語り終えたという確信に基づく発言です。
具体的には「I think, for me, that’s it now. Yeah, that’s done. I think to try and eke more out would be wrong, I like where we’ve left it.」(「自分にとってはこれで終わり。無理にこれ以上絞り出そうとするのは間違いだと思う。今の着地点が気に入っている」)と語っています。
打ち切り作品であれば、クリエイターが「これ以上作る必要はない」と満足した形で終えることはまずありません。むしろ『KAOS』の打ち切り時のように「続きを作りたかった」と悔しさをにじませるのが通常です。この発言そのものが、本作が打ち切りではないことの決定的な証拠といえます。
BAFTA賞を受賞するほどの高評価
本作はシーズン1・シーズン2ともに、BAFTA(英国アカデミー賞テレビ部門)のベストドラマシリーズにノミネートされています。BAFTAはイギリスのテレビドラマにおける最高権威の賞であり、ノミネートされること自体が高い評価の証です。
さらに、シーズン2は2020年のBAFTA TV Awardで最優秀ドラマシリーズ賞を受賞しています。打ち切り作品が最終シーズンで国内最高峰のドラマ賞を受賞することは通常考えられません。批評家からも視聴者からも高く評価された状態で幕を閉じたことが、この受賞歴からもわかります。
IMDbのユーザースコアでもシーズン1が8.1と高い評価を得ており、品質面での問題が終了の原因ではないことは明らかです。シーズン2で質が低下して打ち切られたという見方も、BAFTA受賞という事実の前では成り立ちません。
シーズン2の最終話が物語の完結として設計されている
シーズン2の最終話は、主人公ジェームズとアリッサの物語に明確な決着をつける内容になっています。二人が逃げ続けることをやめ、互いにそばにいることを選ぶというエンディングは、シーズン1から続いてきた物語のテーマに沿った帰結です。
シーズン1がジェームズの銃撃という衝撃的なクリフハンガーで終わったのに対し、シーズン2は二人の関係に穏やかな決着を与えています。視聴者からも「完璧な終わり方」「これ以上の続編は必要ない」という声が多く上がっており、打ち切りによる中途半端な終了とは対照的な評価を受けています。
物語に未回収の伏線や唐突な打ち切りの痕跡は見られず、全16話を通じた一つの完結した物語として成立しています。この構成そのものが、制作側が計画通りに物語を終えたことを物語っています。
放送局Channel 4が続編に前向きだった
先述の通り、イギリスの放送局Channel 4はシーズン2放送後の2019年12月に、シリーズの継続について前向きな姿勢を見せていました。放送局側が作品を高く評価しており、予算や視聴率を理由にした打ち切り判断ではなかったことを示す重要な証拠です。
海外ドラマの打ち切りは通常、放送局やプラットフォームが更新を見送る形で行われます。しかし本作の場合は、放送局が続けたかったにもかかわらず、脚本家の意志を尊重して終了したという、むしろ異例の経緯をたどっています。
クリエイターの意向が尊重される環境で作られたからこそ、作品としての完成度が保たれたともいえるでしょう。
脚本家チャーリー・コヴェルの現在
『このサイテーな世界の終わり』の脚本を全16話にわたって担当したチャーリー・コヴェルは、本作の成功をきっかけに国際的に注目されるクリエイターとなりました。その後も精力的に活動を続けています。
『KAOS』(Netflix、2024年)とその打ち切り
コヴェルの次回作として2024年8月にNetflixで配信されたのが、ギリシャ神話を現代に置き換えたブラックコメディ『KAOS』です。ジェフ・ゴールドブラムがゼウス役を演じ、独特のビジュアルと世界観で話題を集めました。
しかし視聴数が期待に届かず、2024年10月にシーズン1限りでの打ち切りが決定しています。コヴェルは3シーズン分の構想を持っていたため、「胸が張り裂ける思い」と声明を出しました。制作費の大きさに見合う視聴者数を獲得できなかったことが原因とされています。
『KAOS』の打ち切りは残念な結果でしたが、コヴェルのクリエイターとしての評価が揺らいだわけではありません。『このサイテーな世界の終わり』で確立したダークコメディの手腕は、次の新プロジェクトへと引き継がれています。
『Life Is Strange』(Prime Video)を制作中
2025年9月、コヴェルが人気ゲーム『Life Is Strange』の実写ドラマシリーズをPrime Videoで手がけることが発表されました。コヴェルは脚本に加えてショーランナーも務め、作品全体の方向性を統括します。
『Life Is Strange』は時間を巻き戻す能力を持つ写真学生マックスと、幼なじみのクロエが行方不明事件を追うストーリーです。原作ゲームはティーンエイジャーの心情を繊細に描く作風で知られており、『このサイテーな世界の終わり』で10代の若者を描いてきたコヴェルとの相性が期待されています。
2026年3月にはキャスティングも発表され、メイシー・ステラがクロエ役、テイタム・グレイス・ホプキンスがマックス役に決定しています。配信時期は未定ですが、制作は着実に進行中です。
『このサイテーな世界の終わり』はどこで見られる?
本作を視聴できる主な配信サービスと、おすすめの見方を紹介します。
日本ではNetflixで全2シーズン・全16話が配信されています。日本語字幕に対応しており、Netflixのサブスクリプションがあればすぐに視聴可能です。Apple TVでも配信されています。
各エピソードが約20分と短いため、全話を通しで約5時間半で視聴できる手軽さも魅力です。シーズン1だけなら約2時間40分で、映画2本分程度の感覚で一気に見られます。
シーズン1はジェームズの視点を中心に衝撃的な展開が続き、シーズン2はアリッサの視点が加わることで二人の関係性がさらに掘り下げられます。シーズン1の結末を受けてシーズン2が展開するため、必ずシーズン1から順に視聴することをおすすめします。
また、ブラーのグレアム・コクソンが手がけた劇中音楽も本作の大きな魅力です。短いながらも密度の濃い作品なので、一気見に向いています。

